新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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本格ミステリ大賞批判!

今年は固かったなぁ。どっちの部門も鉄板レースそのまま。例年になく読みやすい結果。
それでも個人的に一番意外だったのは、ジャミの思いがけないくらいの健闘っぷり。あれが”本格”で本当にいいの、本格ミステリ作家の京極投票者の皆様?
でもまぁ、そんな結果を生み出したのも、そもそも小説部門の候補選出自体に難有りだったのでは?
ただそれが唯一結果オーライだったのは、「厭魅」の候補落選。来年心おきなく「首無」に大賞あげられるんだから、今年はスルーで問題なしだったね。
ところで一応「GOTH」という例外があるとはいえ(この作品も連作色が強かったけど)、短編集を候補に選ぶのは相当極端な特徴がない限りは、止めた方がいいのではないだろうか? 今年も両作とも最下位になっちゃったしね。長編と比しては、挙げるには躊躇するのではないだろうか。それを五作中二作とは、それだけでも今年は選出段階でのバランスの悪さが目立っている。
それも含めて、選出方法は再考すべき余地が大いにあるだろう。選考委員内だけの非常にローカルな投票で決められた、たまたまな結果だとしか思えないもの。選評で「異議申し立てはなかったため」「有力な反対意見は表明されなかったため」なんて書かれて選ばれるのはどうよ?
意見表明のため、ちょっとエキセントリックなタイトルにしてみた。賞自体の意義に何ら異議はない。しかしやはり、昨年・今年と顕著に感じられた、ごく少数の選者の意図による(時には本賞の意味合いすら左右しかねない)候補選出には疑問を投じずにはいられない。決選投票自体は全作読破という条件での投票ポイントという、非常に厳密なものなだけに、候補選出ルーチンでのルーズさが目立ってしまうのだ。
どうかもっと納得のいくシステムへの移行を考えていただきたい。
 
(小説部門)
『シャドウ』道尾秀介:得票数17(第七回本格ミステリ大賞受賞作)
邪魅の雫京極夏彦:得票数11
『樹霊』鳥飼否宇:得票数8
『顔のない敵』石持浅海:得票数7
『時を巡る肖像』柄刀一:得票数7
 
(評論・研究部門)
『論理の蜘蛛の巣の中で』巽昌章:得票数16(第七回本格ミステリ大賞受賞作)
『探偵小説と記号的人物』笠井潔:得票数6
刑事コロンボ完全捜査記録』町田暁雄監修:得票数5
『戦後創世記ミステリ日記』紀田順一郎:得票数4