新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

SRの会55周年記念全国大会オフレポ(第三回・講演会編)

渋谷に集結するミステリの鬼達。一般参加者も含めて、80名くらいいたのだろうか。もっとかな? 後で道尾氏が驚いていたように、年齢層が無茶苦茶高かったのは、SR主催だからだろう。これに関しては、いずれ別エントリで書いてみたい。
さて、ようやく13:00。田村会長の挨拶から、全国大会本大会が始まった。
さっそく、メイン企画第一弾。紀田順一郎氏による講演会『Mysteries & Imaginations』だ。もうすぐ発売になる(会場では先行発売されていた)『幻想と怪奇の時代』の話をベースに、ご自身と幻想怪奇文学との関わりについてがテーマであった。
驚いたのはPCを使用して、様々なスチール写真を利用したプレゼンテーションだったことだ。スキャナ等で自分で取り込まれたのかな? PowerPointのアニメーションまで駆使した、堂々たるプレゼン。いやあ、お若い。背景色は怪奇の象徴だという(海外では月光の色のイメージらしい)黄緑で統一されていた。
大伴昌司氏、荒俣宏氏との交流をメインに、様々なアンソロジーや全集を世に送り出してきたお話。たしかに昔は色々とこういうアンソロジーで、幻想文学・怪奇文学に触れたものだったなぁ。
 
最も印象に残ったのは、本格ミステリと怪奇幻想小説との対比。

本格ミステリ         怪奇幻想小説
 発端の異常性          発端の日常性
 展開の緊迫性          展開の異常性
 結末の合理性          結末の異常性

ここから更に話を発展させると、展開と結末がいずれも異常性で括られるため、メリハリが利かない。よって、別の面を強調する他はない。それが”描写力”だという説が語られた。
乱歩が愛した『赤毛のレドメイン家』の評価が現代では極端に低いのも、自身も怪奇幻想の書き手とも言い得る乱歩がこの描写力に惹かれたのであり、そこに現代の評価軸との違いがあったのだと看破されたのは、たしかに慧眼だと思う。
 
でもって、痛快な毒舌いまだに健在(笑)
クイーンが褒めていたという、ブラム・ストーカーの未訳作品"The Jewel of the Seven Stars"の感想を質問コーナーで問われて、一言の元に「駄作」と切り捨てられた、清々しいほどの舌鋒がもうたまらない。
これだけ古典復権というか、黄金期やその前後の作品が復刊されている現状を踏まえてさえ、「翻訳し残しなんて面白くない、理由があって訳されてないんだからね」と言い切る、その頑固なまでの強さが素敵。
昔語りがメインではあったものの、堪能させていただきました。
 
講演会の後は、座談会への繋ぎに(なんて言っちゃいけない)「SRの殿堂」と昨年度のベスト10の発表。ここで公開するのはフライングだろうから、詳細はSRの会ホームページ(仮)で発表になった後にしよう。
ちなみに「SRの殿堂」は、私が投票した10作品は全てベスト11の中に含まれていた。まぁ、そのくらいあまりにも当たり前な結果だと言えるかもしれない。
国内編、海外編のベスト1は、いかにもSRらしい結果だろう。特に海外編。アレが一位になるのは、やはりSRしかないよなぁ。二位もさすがSRらしい選出。みんなが好きなあのお方。
 
さて、次はいよいよ期待の新鋭二人、道尾秀介氏、米澤穂信氏の登場!