新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

スイミング・プール(ネタバレ解読有り)

11/20 BSジャパン放映分。
フランス映画らしい、かったるいトロトロした展開が少々辛い。なんだ、普通の(但し、スリル感のない)クライム・サスペンスなのかと思いきや、最後の最後にきょとんとしたオチが待っていた。難解で頭を抱える。
まぁ、こういうことなんだろうなってのを、続きから。
 
(以下は、映画「スイミング・プール」の完全ネタバレです。ご注意ください)
 
 
 
彼女が書き上げた本の題名が「スイミング・プール」であること、編集者の娘が実際は不細工な少女だったことから、映画の内容のほとんどは主人公の書いた小説だったのだと推測できる。つまりは全て彼女の妄想。
以前の愛人であった編集者に冷たくされた仕返しに、彼の娘を夜ごと男を取っ替え引っ替えしては殺人すらも犯してしまう少女として描く。挙げ句には無断で別の出版社から刊行し、完全な訣別を果たしてしまう。
おそらくは別荘に残っていた娘の痕跡から、想像を膨らましていったのだろう。男がいつも電話に出てくれないシーンは、おそらく現実。自ら身を投げ出すシーンなんかは、主人公の欲求不満ぶりを表していると解釈することも可能だろう。妄想の中で彼女自身が相手をするのが、庭師だったり、食堂の主人だったりするのは、彼女の行動範囲の狭さを如実に物語っている。
しかし、そういう現実で遭遇した身近な男しか妄想の相手に出来ないようでは、彼女自身の想像力の無さが思いやられる。人気作家と云うことにはなっているが、きっと大した作家ではないな(笑)
それに、だって、映画はこのオチがあるからまだ締まってるけど、彼女の書いた「スイミング・プール」って、その手前で終わってるわけだよね。それって、すんごくつまんないよ、ぜってぇ〜。
 
ミステリ・ファンとしては、伏線の乏しさに不満足感を覚えるのは必至。ラストで意表は突かれるけど、なぁんの必然性もない、ただのひっくり返しじゃなぁ。
これが新本格だったら、章替えしたり、何らかのタグを付けて、妄想(小説)と現実とが切り分けられていたことを、読者が後で追認識できる構造になっているのだけれどね。PCに向かうシーンだとか、プリントアウトした原稿を読むシーンだとか結構頻繁に描かれてはいたけど、そういうシーンで実は切り分けが行われていた……なぁ〜〜んてことはあるわきゃないよな。