新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

あげくの果てのカノン 1~5巻(完)

 
以前、「川島・山内のマンガ沼」で1巻のラスト(第0話を除く)の引きが紹介されて、
それがとても強烈だったので、読みたくなった作品。
 
1巻から5巻の紹介文の中から、それぞれのフレーズの一部を抜粋してみる。
「ストーカー気質メンヘラ女子の痛すぎる恋に、共感の嵐です!」
「1集発売直後から話題騒然の「SF×不倫」漫画、待望の2集が遂に発売!」
「世界の緊迫と、個人の切実さがはじけ飛ぶ 大注目、不倫SF、第三集!」
「「好き」ってなに? 「永遠」なんてあるの? 恋愛の命題を突き詰める、大注目作。」
「「恋とは何か」その根源を問い続け、全国の共感を集めた傑作が遂に完結、第5集。」
 
「SF×不倫」というよりは「SF×女ストーカー」という雰囲気だったな。
もっとどろどろした不倫話かと思ったら、ちょっとした浮気心って程度なんだもの。
それよりストーカーっぷりが、正直引く。
 
「共感の嵐」だとか、「全国の共感を集めた」とか、
いくらなんでもそんなことはあるまいと思うよ。
どちらかと言えばストーカー気質の自分にとっても、
これは異様な部類で、そんなメンヘラ読者が大量にいるとは思えないもの。
 
恋愛の命題とか、「恋とは何か」とか、この作品で語られていたり、
学べたりするものではあるまい。
極端に一方向に特化したものとしては、突き詰めてるかもしらんけど。
 
SFとしては、最後の方で促進剤とか、なんか裏の話のどんでんでも
あるのかと一瞬期待させてくれたけど、結局うやむやだったな。
自分でも上手く処理出来なくなって、中途半端になったようにも
感じられて、なんか釈然としなかった。
 
う~ん、正直読まんでも良かったかな、な作品だったな。
 

遠い空の向こうに

TSUTAYA西友町田店の百円キャンペーンでレンタル。これで最後。これのみ旧作。

宇宙に想いを馳せた少年の夢、それは、ロケットを飛ばすこと!
NASAのエンジニアの自伝を映画化した、爽やかな青春ドラマ。

 
いやあ、これは良かった。本当に良かった。
 
西友町田店のお薦めコーナーのところにあって、ロケットボーイズを描いてる作品だし、
ちょっとだけ調べたらやたら評判良さそうだったんで借りて観たら、これが大正解。
 
青春映画として、親子物として、師弟物語として、
いずれをとっても一級品の、本当に素晴らしい作品。
 
本作のプロデューサーが「フィールド・オブ・ドリームス」と同じ人だと知って大納得。
全く違う描き方ながらも、親子の関係をここまで見事に描き切り感動を生み出してくれた。
 
夢に導いてくれる女教師の存在も文句なしに素晴らしい。
 
しかもこれが実話なんだよ。
最後に本人達の映像が出てくるところなんかも実に沁みる。
 
いやあ、本当に良い映画を観られた。
これは万人にお薦め出来る良作だと思う。
 

竜とそばかすの姫

TSUTAYA西友町田店の百円キャンペーンでレンタル。4本目の最新作。

 
とにかく違和感なのが、主人公の台詞。
 
歌になると無茶苦茶いいので、それが買われてのミュージシャンの起用なんだろうが、
平場の台詞がどうにもこうにも素人レベル。
最後まで違和感が拭われないままだった。
 
Wikipedia見てみたら、ほとんどの役を本職の声優ではなく、役者が当てているようだけど、
それに埋没すればいいものを、主人公以外はさほど違和感なく、主人公だけが浮いていた。
(毒舌家の友人が幾田りらだなんて、全く気付かなかったなぁ。いや、上手かったよ)
 
ストーリー的には、50億の中から一人を探すってところのあっけなさ感、
主人公が一人で向かうところの不自然さとか、突っ込みどころはいつものごとく満載。
 
結局、歌唱シーンの良さに尽きる、そんなアニメ映画だったな。
 

マリグナント 狂暴な悪夢

TSUTAYA西友町田店の百円キャンペーンでレンタル。3本目の最新作。

 
死霊館「ソウ」シリーズのジェームズ・ワン監督の最新作。
 
「ホラーはついに別次元へ」とか、「前代未聞」とか「今までとは一線を画す」とか
謳い文句が派手派手しいし、監督自身も特典映像見るとそう自負してるっぽいけど、
格別な新しさは感じなかったかな。
 
アクション映画のような演出とか、くすぐりのようなユーモア感とかは、
普通のホラーでも普通に良くあるような要素だと思うし。
 
正体の造形はこれまでには無かったものだとは思うけど、
イデアの一環というだけで「別次元」とか「一線を画す」ようなほどとは思えない。
 
「ソウ」を生み出したジェームズ・ワン自身が、自信を持った作品のようだったので、
もっと何か意外性のあるものを期待してしまってた。
その意味では期待を満たしてくれるようなものではなかったなぁ。
 
ホラーの敵役の新種の一つ、ってところに興味を持たれる方限定ならお薦め。
 

そして、バトンは渡された

TSUTAYA西友町田店の百円キャンペーンでレンタル。2本目の最新作。

 
本屋大賞受賞作品の映画化。原作は未読。
 
これは割と良かった。
 
「それぞれに秘密を抱えた二つの家族の運命が交錯する感動ドラマ」
という謳い文句までは良いが、少し長めのストーリー紹介は読めばほぼネタバレだと思うので、
もし未読・未見の方は、これから読むor観るのであれば、出来るだけ情報入れない方がいいですよ。
上のAmazonへのリンクも、クリックして「ストーリー」とか読まないように。
広義のミステリに分類することが出来る作品なので。
 
観ていれば、どこかの段階でそこには気付くだろうけど、
途中で「ああ、そういうことか」と自分で気付くのと
(もしくは物語として描かれるまで気付かないのと)
最初からわかっちゃってるのとでは、大きく印象が変わると思うので。
 
ただ、その先の秘密には気付けなかった。
 
こういったミステリ的構造を持っていること。
みんなが素敵で、きっと幸福感を与えてくれること。
 
ということで、とても良い作品だと思うんだけど、
冒頭で「割と」を付けてしまったのは、当然わけがある。
「許される、許されない」問題はやはりあるんだけど、
それ以上に父親としてこの状況に至ることが絶対にあり得ないので
(自分が子を持つ父親として確信して言える)そこがどうしても引っかかるのだ。