新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

ミステリー事件簿の原点とブックチケットの罠について

100円オフクーポンがあったので、この値段で。
1.はこんなものが百円棚にと嬉しくなってしまう代物。Ⅰ巻:SF・ホラー編、Ⅲ巻:アクション・ドラマ編のようだが、当然一番欲しいミステリー編ってのがなお嬉しい。2.はようやく百円棚落ち。待ってました。これで一気読みしちゃおっと。

まだ1~6巻目も通してないけど、信頼買い。
 
上記を買おうとして、旭町店のブックチケットも買おうと思って、初めてわかった。
 
このブックチケットって、店舗指定ではなかったんだな。対象店舗ならどこでも使えたのかってことで、9/27に買ったチケットの最後の1冊分として購入できた。これならもう1個チケット買っちゃおってことで、買おうとしてやっちまった。
 
この”どこでも”って奴はホントの”どこでも”じゃなくて、関東エリアとかのエリアは固定されてた。対象店舗を調べるためのエリアだと勘違いしちゃって、また二回目だからあまり気にせずサクサク購入しちゃった(決済情報も確認されず、ほぼ1クリックでの購入みたいな感じだったし)。
ちゃんとボタンには「○○エリアで使えるブックチケット購入はこちら」と書かれてるので、全面的に自分(と自分の老眼)が悪いんだけど。
 
本を購入しようとして北海道の店舗しか表示されずあせった。とりあえずキャンセルして運営に問い合わせ。
で、つい先ほど返事が来て、解約して返金してくれるというので助かった。また、同じチケットは最初の有効期間が過ぎるまでは買えないんだって。冊数が違うものならOKとのことです。
 
皆様もブックチケットの罠(じゃなくて、あくまで自分のミスでしかないんだけどさ)にはご注意を。
でも、「どんな場合でも返金しません」とか書いてあるけど、上記のように助けてくれます。
 

忌名の如き贄るもの

 
本格ミステリの論理性としては、いつもよりだいぶ弱かったんだけど、
その分真相のインパクトは、いつも以上の出来映え。
 
強烈すぎる(    )ダニットに、頭くらくらしてしまうこと請け合い。
(そこのあなた、マウスでドラッグしても括弧内には文字入れてません。
 そこのあなた、文字数を数えて判断しようとしないように。
 どれでも入るように便宜的に4文字分空けただけで、どれが入るか秘密)
 
最後の一行でホラーに落ちるところも、ゾワッとしたなぁ。
 
この衝撃、このゾワゾワ感、是非、読んでおたしかめください。
 
とにかくこの衝撃は、シリーズ中で比較するなら、
「幽女の如き怨むもの」の極端な構図に匹敵するかも。
その意味でも、シリーズの上位に置きたい作品だな。
どうしてもどちらかを選ぶなら、とんでもないくせに美しいという意味で、
幽女の方を上にしてみるか。
 
というわけで、シリーズ全11作品、自分の順位はこうなる。
首無>山魔>幽女>忌名>碆霊>生霊>水魑>魔偶>密室>厭魅>凶鳥
ひょっとしたら、厭魅、凶鳥は今読むと、少し印象変わるのかもしれないけど。
 
採点は8点。本年度の現時点2位に入れてみよう。
ちなみに各年度の順位表はこちら。本年度の順位表はこちら
 

法廷遊戯

 
第62回メフィスト賞受賞作。
だいぶ久しぶりにメフィスト賞読んだ気がしたけど、調べてみたら
「NO推理、NO探偵?」「閻魔堂沙羅の推理奇譚」「絞首商會」とか、
比較的最近の作品も少しは読んでたみたいだな。
 
本作はメフィスト賞にしては、ひどく真っ当な作品。
 
比較的ちゃんとした法廷ミステリで(模擬裁判もあって、二度おいしい)、
比較的ちゃんとした青春ミステリで、
比較的ちゃんとした真相の意外性が描かれてる。
 
ただ、それら全部に「比較的」って枕詞は付けるよなってだけ。
つまりは、どれもそれなり。
 
自分のいつもの評価ポイントとは違うんだけど、
納得感に繋がるところなんで言っちゃうけど、
性格の描き込みなどがイマイチ不足しているのか、
この人物がこういう行動を起こすかってところの説得力が感じられなかった。
 
そんなわけで、惜しくも7点に届かない6点ってところで。
 

メルカリを買う

 
日曜日に若葉台往復の歩きingした際に、コーチャンフォーで見つけて、声に出さずに大吠えした作品。
ちょうど日曜日だし、家帰ってヤフーショッピングで買おうと思ってスルーしたが、元値が¥1,000未満だからか、送料無料でそれなりのポイント還元してくれるショップが無かった。
楽天とかで数十ポイントくらいなら、地域の本屋さんに貢献した方がいいなということで、昨日のテレワーク後の散歩で駅前の本屋に寄って購入。
 
メルカトル鮎の第三短編集。
これまでの二冊「メルカトルと美袋のための殺人」「メルカトルかく語りき」はいずれも
数年に一度しか出すことの無い9点を付けている。
どちらも本格のエッジを知るためには、読み落とすことの出来ない作品集。
本格の史上に残さざるを得ない超越した作品群。
 
いったい今度はどこまでエッジを拡げて見せてくれるのか?
本格ミステリという宇宙を膨張させているのは、ビッグバンではなく麻耶雄嵩だ!
 

DIVOC-12

10/02(土) イオンシネマ新百合ヶ丘にて鑑賞。
 
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12人の監督による短編12本のオムニバス映画。
上田慎一郎作品も入ってるし、一時期深く関わってたCrystal LEDを使用した
バーチャルプロダクションという撮影技法も使われていたりもするってことで観に行ってみた。
 
作品順は多分下記だったと思う。
 
三島有紀子監督チーム作品・テーマ「共有」
『睡眠倶楽部のすすめ』『YEN』『海にそらごと』『よろこびのうた Ode to Joy』
 
上田慎一郎監督チーム作品・テーマ「感触」
『あこがれマガジン』『魔女のニーナ』『死霊軍団 怒りのDIY』『ユメミの半生』
 
藤井道人監督チーム作品・テーマ「成長への気づき」
『流民』『タイクーン』『ココ』『名もなき一篇・アンナ』
 
一応、各チーム毎にテーマが設定されてるってことになってるけど、
あんまし気にする必要はないと思う。妥当感はそんなに無いもの。
たとえば自分がテーマ付けるなら上から順に「安心」「幻想」「再生」かな。
 
ベストはもうダントツで、上田慎一郎の『ユメミの半生』。
この短さの中で、初期から現代までの名画の歴史まで盛り込んだ、映画オマージュ映画に仕上げている。
エンタメとして愉しく、COVIDの状況も踏まえて、ほろり感も出てて、もう圧倒的。
 
ベスト3の残り二作品を選んでみると、『死霊軍団 怒りのDIY』『あこがれマガジン』
になってしまって、結局全て上田組で揃ってしまった。
というのも、短編ながら起承転結が揃ってて、特に「結」の収まり感があるのが
上田組だけってことだからだと思う。
 
上田組以外から選ぶとすると、三島有紀子監督チームからは『睡眠倶楽部のすすめ』かな。
とても緩やかに落ち着くラストに。彼女が人生を遡っていくようなそこまでの描き方も。
藤井道人監督チームからは『名もなき一篇・アンナ』だな。直接は語らない真相の描き方に。

映像作品としては『よろこびのうた Ode to Joy』とか凄いとは思うんだけど、
こういう感性だけの作品ってのはなぁ、というのが正直なところ。
同様に『流民』も映像も技法も凄いと思うけど、語りたい物が見えないもどかしさを感じる。
 
全体的につまらない作品は無く、概ね満足できた作品だったかなぁ。
特に自分としては、上田慎一郎が期待以上の作品だったので、観る価値あったからな。