新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ネヴァー・ゲーム

 
リンカーン・ライム、キャサリン・ダンスに続く第三の名探偵の登場。
 
懸賞金ハンターが職業ということで、
上記二人がいずれも”静”の特性を持ったキャラクタ設定であるが故に、
”動”の特性を担うものとして、新シリーズが構想されたんじゃないかと思う。
 
ただ、新シリーズの登場にしては、期待感を充分に満たしてくれる
ものでは無かったかなというのが正直なところ。
  
細かいどんでん返しの積み重ねは割と少なく、
大きな波でひっくり返しは組まれてはいるものの、
スリードとしては弱さを感じてしまった。
自然に同調してしまって、引きずり込まれてしまってるんじゃなくて、
あっ、こう持って行こうとしてるということは、って読めちゃう感じ。
読者としての慣れが入ってるのかもしれないけど、それでもこれまでは
常にその上を越えていかれてたものだから。
 
犯人の正体をばらすところもあっさり演出だったしなぁ。
 
シリーズを通しての謎も仕込まれているが、
そこが今後も楽しみと思えるようなものでもなかったな。
 
う~ん、採点は7点で。
 

楽園とは探偵の不在なり

 
題名から云っても、天使という題材を取っても、
テッド・チャンの「地獄とは神の不在なり」にインスパイアされた
作品だろうと思っていたが、やはりそうだった。ま、そりゃそうだ。
インパクトは元ネタの方が大きいと思うけど、比べる必要は無いか。
 
「2人以上の人間を殺すと天使によって地獄に落とされる」
という特殊設定自体は非常に魅力的で、
それが推理でも活きている点を評価する声が多かったと思ったんだけど、
いざ読んでみると、さほどではなかったと思えたな。
 
一点だけ個人的には好きなタイプのバカミス着想トリックはあったんだけど
砂糖使って、天使で古井戸を埋め尽くすって奴
全体的にはミステリとしてそう巧みとは思えなかった。
 
採点は7点を付けるには躊躇して6点。
 
ところで、探偵の存在意義みたいな苦悩を語りたがる作品が
多いのはいったいなんなんだろうな。法月が元凶だろうか。
だいぶ食傷してるんだけど。点が辛いのはそのせいもあるかも。
 

短編マンガ集 バニーズほか

 
水木しげる風というのか、なんか古めかしさを感じさせる画風と、
SFというよりは、藤子F不二雄の”少し不思議”の感触に近い作風。
一般の青年誌にはとても似つかわしくない独特の雰囲気で、
ガロとかじゃないと向いてないんじゃなかろうかと思わせる。
 
シュールな作品もあり、微妙なホラーテイストもあり、
ほのぼのとしてながらも、その実辛辣だったりもして、
なかなか人を選ぶ作品群かもしれない。
 
個人的には他の作品も読んでみたいとまでは思えなかったな。
 
ベストは「衛生下士官」で、
「ロッカー貿易」と「イパネマの娘」でベスト3かな。
 

机上の九龍

 
設定(特別保護クローン等)も凝ってるし、
舞台(ネオ九龍)の雰囲気も良い。
ストーリー展開もそれなりで、
完成度としては、決して悪くないとは思う。
 
でも、なんだろう。
読み終えても、この何も残ってない感触は。
 
ほぼ全部が平均点をクリアしてるとは思うんだけど、
特別な魅力っていう、なんかそういう突き抜けた一点が無いのかな。
 
惜しい作品。
 

猫探偵 1巻

 
11作品、全エピソードに『解決編』つき、だけど、
まぁ予想通りのゆるゆるの本格推理ギャグ漫画。
 
ちゃんと事件と推理と解決が揃ってるので、
Excuse無しの本格ミステリと言って言えなくは無いのかも。
 
とはいえ、ここがいいと強く推したいところも無く、
かといって、こりゃダメだってところも特には無いので、
いつものベスト3選出だけしときましょ。
 
順不同で掲載順に。 
最後から2コマ目の伏線(?)を買って「物言わぬ死体 たんこぶは語る」
意外にほろりな「タコさんイカさん殺人事件」
人材の優秀さが光る「ワトソン君は誰だ!?殺人事件」