新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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みつばちマヤ

昨日は人間ドックで、帰りに用事があって町田まで。
人間ドックでは初めて胃カメラで組織取られたせいで、一応検診前日も禁酒してたもんだから、
二日連続でアルコール抜き生活を送る羽目に。いったいいつぶりだろ。

この二冊を並べたら、もう表題はこうなるに決まってる。しかし「みつばちマーヤの冒険」を知ってる人なんて、50代以上しかおらんだろうなぁ。「昆虫物語 みなしごハッチ」なら、TV探偵団的な番組で見かけることあるから、まだ知名度ありそうだけど。
1.はあの上下巻を一冊にまとめたのか、つまみ食いにいいか、と勘違いして買ってしまった。なんかのマークみたいに「1」の文字が入ってたよ。映画のダイジェスト版みたいにまとめたとしても、さすがにこの薄さでは無理か。
2.はSFマガジン掲載の作品もあるみたいだし、帯には月影先生も描かれてるので、ガラスの仮面ネタも当然含まれてるんだろうなと。でも、買って帰ってパラパラめくってみても、それらしき作品は見当たらず。よくよく見たら中程に「ごあいさつ」というページがあって、「あゆみ」という作品集を別に出していて、それと対になる作品集だからなんだそうな。北島マヤはどこにもいなかったよ。まぁたまに須藤真澄の画風に触れるのも心地よいのでいいいんだけども。
 

アーサー・ピューティーは夜の魔女

 
1巻という扱いで、発売日未定ながら次巻予告も書かれてたのに、
結局続巻は出なかったみたいだな。
 
猿の手」の最後の願いとか、フィボナッチの時間物展開とか、
フリだけは散々してたのにね。
 
ゾンビ物のひねりまくった超展開というイメージで、
多少の興味深さはあるにはあるんだけど、
逃走劇物にするには、主人公が無敵すぎて、
スリルがさっぱり感じられないのが、難点に思えたな。
 
町の意外な産業とか、クローズド・サークルの殺人(?)やら、
ミステリ趣味も垣間見られたけど、
次巻が出てたにしても、まぁ読むことはなかったかなぁ。
 

星のポン子と豆腐屋れい子

星のポン子と豆腐屋れい子 (アフタヌーンKC)

星のポン子と豆腐屋れい子 (アフタヌーンKC)

 
予備知識なしに読んだ方が良いという事前知識から、ある程度予測はしてたし、
「ハセヒ」ってきっとそういうことだろうな、とは思ってはいたものの、
そっからの急展開には驚かされた。
 
これ読んでる人にはもう遅すぎだろうが、
たしかに予備知識なしに読んだ方がいいだろう作品。
 
そんな中盤はまぁあれなんだけど、
弟の話になってからの逆説的な展開はなかなか。
 
意外にすっきりなラストにもなったし。
珍しげなもん読んで、まぁそこそこ満足は出来たかも。
 

運命の女の子

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

 
雰囲気のある作品を描ける人なんだなぁ。
 
読者に対して、ずしりとしたインパクトを与えてくれる。
一編一編がヘビー級のように重い。
三つの短編が収められているが、どの作品も一冊読み終えたくらいの
読後感を覚えてしまえる。
 
雰囲気の持つ力でねじ伏せられてしまう。
一度読むと忘れられないような、魅力を持った作家かもしれない。
 
証言聴取の場だけなのに、ピリピリとした緊張感と、
ゾクゾクする怖さを感じさせてくれる「無敵」。
青春物、恋愛物の一つの型のようでいて、型からはみ出している、
救われたのか、救われていないのかわからない、切なさと痛みの「きみはスター」。
「眠りの森の美女」のモチーフを、現代的なファンタジーに仕立て上げ、
リーダビリティの高い、高い完成度に磨き上げた「不呪姫と檻の塔」。
三編の中でのベストはこれだな。
 

巴里マカロンの謎

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

 
このシリーズ、11年振りらしい。
それなのに完結編の冬ではなく、そこまでの繋ぎの番外編なのかな。
冬はいつやってくるのだ。
(まぁ冬にはこの秋桜ちゃんが不可欠のキャラなので、
 その前に本作で顔見せ興業としたのだ、という流れになるのかな)
 
いつものスイーツ絡みの事件だけど、甘いだけじゃなくて、
ちょっとビターな意地の悪さという隠し味が入ってるのもいつものごとく。
(隠し味なんて生易しいもんじゃない場合も度々あったけど、本作では全て穏当)
 
ベストはやはり表題作かな。
北村薫の私シーズの「砂糖合戦」を思い出させる日常の謎
 
次点は「伯林あげぱんの謎」だな。
この短編、途中でだいぶ間を空けて読んでしまったのが、かえって幸いして、
ラスト読みながら含み笑いしてしまった。
 
相変わらず面白く読んだけど、ミステリとして突出した短編はないので、
採点としてはやっぱり7点には届かず、6点かなぁ。