新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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コーヒーが冷めないうちに

TSUTAYAの新作・準新作5本1,000円で鑑賞。

コーヒーが冷めないうちに 通常版 [Blu-ray]

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以前「王様のブランチ」での紹介見た時点で、
薬師丸ひろ子松重豊のシーンで泣きそうになってしまったので、
TSUTAYAで準新作になったら借りようと思ってて、この機会に一足早く新作で見られた。
もちろん家人が誰もいない時を見計らっての鑑賞。
 
いやあ、やはり予想通り、
薬師丸ひろ子松重豊のシーンでは、もうボロボロに。
松重豊の顔を見てるだけで、リアルに伝わる心情に締め付けられる。
薬師丸ひろ子の方も、それに充分応えてくれる表情と台詞回し。
二人の演技力もの凄ぇ~とおそらく左脳の一部では感じつつも、
二人の心情のそれぞれにどっぷりとはまりこんでしまって、
もうこんなの泣くしかないやん。
 
映画全体としてはオムニバス形式と云うこともあってか、
TVドラマみたいな軽さが感じられはしたんだけど、
このエピソードだけで(というよりこの二人の演技だけで)
これは充分観る価値があって良かった。
原作読んでたとしても、自分の脳内で想像し得るより、きっと遙かに上だから。
(手紙持ち帰るとこだけは、設定に矛盾ありとは思ってしまったけどね。
 ここはあくまでも現在の時間軸の中で、手紙を手に入れさせて欲しかった)
 
あと最終話の時間物設定の微笑ましい使い方もなかなか。
エンドクレジットでの描き方も楽しくて、後味も非常に良かった。
(ただこれも”過去は変えられない”という設定に矛盾してるように思う。
 これは時間移動が行われた現在の方が歴史として確定したので、
 未来から見た過去(現在)を改変したわけではないという理解かな?
 またもう一つ、彼氏が時間を指定できたのも、とても謎だった。
 一回、佳純ちゃんに未来に飛ばしてもらう必要があったのでは?
 将来自分がこうさせると決めたから、未来の自分は絶対にこうするという
 自信を持って、時間指定も出来たという解釈も考えてみたけど、
 その時間に石田ゆり子がトイレに立つ予測は出来ないので、それも無理。
 というか、一回飛ばして貰ったとしても、これは無理だなぁ。
 それより何より、時間まで指定しておいて、彼氏なんで立ち会ってないんだよ?
 見ておきたい要求に勝てる人いるなんて思えないな。
 ああ、もう、そういうあれやこれやは真剣に考えちゃいかんぞってことだな)

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TSUTAYAの新作・準新作5本1,000円で鑑賞。
全部新作で選んだんだけど、中で流れる予告映像見て、
1本は「若おかみは小学生」を選べば良かったと小後悔。
(アニメは別フロアになってるから気付かなかったよ)

 
全編がPC画面の中で展開されるという、
語り口が売りの作品だと思って油断してたら、
なかなか練られた脚本だったことに、心地よい驚きを感じることができた。
 
メメント」や「ユージュアル・サスペクツ」のように、
優れたサスペンス映画は、語り口のユニークな作品こそ特に、
そのプロット/ストーリーも素晴らしいという、
良き前例に、また新しい一例を加えてくれたと思う。
 
こういう新しい見せ方って、近年ではサスペンス映画もしくは
ホラー映画(ただし、こちらも序盤で謎が提示される作品が多い)
から始まることが多いように思う。
昔はちょっとぶっ飛んだ若者達を描く青春映画が、
そういう新しい切り口を開いていってたようにも思うけど。
この辺真面目に考察すると、ちょっとした映画論の入り口になるんじゃないのかな。
 
とにかくPC画面の中だけで、どう映画を成立させるのか、
という興味を満足させるだけでなく、
きっちりとしたサスペンス映画の骨格が盛り込まれてて、
驚きのどんでん返しも味合わせてくれるだなんて、もの凄く儲けた気分。
しかも嬉しいことに、後味の良い作品でもあった。
 
前者の興味では、カーソルやタイピングの動き(スピードも含めて)で、
感情の動きすら表現するという小技もお見事だった。
 
新しい手法の名作サスペンスに脱帽!

クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

04/21 テレビ朝日放映分。

 
オトナ帝国、戦国大合戦と、続けざまに感動させられて以来、
長らく遠ざかっていたけれど、久しぶりに見た本作でも、
やっぱりオトナ心を射貫かれてしまっちゃった。
 
いやいやまさかの、ちょっとした驚きの展開。
前半のギャグやアクションを愉しんだ後に、
後半では意外とシリアスなSF的葛藤が描かれることになるのだから。
 
イーガンに代表される近現代SF作家の描く未来世界のように、
人格すらもデジタル化/モデル化により複製可能となった世界での、
アイデンティティの問題。
 
生理的に受け入れられない旧人類達(みさえ)と、
柔軟に許容出来てしまう新人類達(しんちゃん)という、
対立の構造すら、うっすらと示されていたりもする。
 
意外に大きくて深いテーマなんだけれど、それを”家族”という
一番ミクロで、親しみ深い構図の中に置かれてしまうので、
自分の問題として捉えざるを得なくなる。
 
それも選ぶ側、選ばれる側の両方の視点から共感できちゃうので、
もうとーちゃんとしては、まぶたの裏を感傷がチクチクしてくるんだってば。
 
やっぱ、しんちゃん、侮れんなぁ。

ちはやふる~結び~

03/29 日テレ1放映分。

 
それぞれのキャラが立っている、あの原作を実写化するのは、
困難なミッションだったと思うが、比較的成功してるのではと思わせてくれた。
デフォルメされた個性は、実写化で失われているが、
うっすらと残しつつ、上手く映画世界に馴染ませてあったと思う。
 
原作そのものを過度に求め過ぎなければ、
これはこれで青春映画の三部作として、しっかり成立してるように思えた。
 
長期連載をこの尺に収めるので、駆け足感や都合良く上手くいきすぎ感が
出てしまうのは、いたしかたないところだろうと思うし。
 
で、三部作の締めである本作だが、
ちゃんと原作のエピソードを生かしつつ、オリジナルの展開で、
劇的なクライマックスを演出出来てたんじゃなかろうか。
 
そのものは描かなくても、「ちはやふる」のその後が見えるラストシーンも
あやふやな逃げではなく、好感を抱いた。
 
キャスト発表時の落胆感を巻き返してくれて、ななか良い三部作だったと思う。

相棒 劇場版IV -首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断-

03/24 テレビ朝日放映分。

 
劇場版としては、いつもの出来映えといったところか。
 
劇場版ならではのスケール感と、お馴染みキャラの再登場のお楽しみ。
そういうエンタメ要素がメインになってるもんだから、
逆にミステリ要素や推理の面白味が犠牲になってるのも、いつもと同じ。
 
予定調和的に安心して愉しめるというのが、劇場版全般としての狙いなのかなぁ。
フーダニットのとこなんかは、おそらく誰もが皆の想定範囲内で、
ええ、でしょうとも、と心の中で突っ込んだ人が大多数だろう。
 
その分、ホワイダニットに関しては充分に描きこまれてて、
鑑賞後の後味としては悪くない作品だった。
 
いつかは推理に振り切ったような映画版を見てみたいなぁ。
 
ミステリ作家にもファンの多いドラマだから、コナンとかみたいに、
そういう人に原作任せてくれるといいのに。
ノベライズ書いてる鳥飼否宇なんか、いつでもレディ状態だろうし、
大倉崇裕とか、大ファンを公言してる作家も多いと思うから。
(そのまんま大倉さんだと、コナンと被っちゃうけどね)